思いで

昨日、早朝までの季節外れの雨の上、日中の気温も高くて一気に雪を融かし始めた。今日も2月初旬というのに気温が上がり、雪解けが進んだ。おかげでダリ散歩道は踏み固められ氷化していたゴツゴツの氷のエッジが融け、ツルツル道となってしまった。こうなると長靴では怖くて歩けぬ。かといってアイゼンを履いてというわけにもいかぬ。仕方ないので何時もの散歩道を逸れて林の中のまだ誰も歩いていない雪をラッセルすることとなるが、表面がクラストしているので踏み抜き甚だ疲れる。ダリは軽いので踏み抜きもせずにスタスタ歩いてはこちらを見てニタニタ笑っている。犬に先導されてダイエット・ウォーキングさせられている図である。

アトリエで仕事していたら外でカサコソと変な音がする。一度外に出て見るが変わったことはないし、音は止む。仕事に戻るとまた音がする。もう一度出てよくよく見たら、サッシのガラスと網戸の間に小鳥が一羽入り込んでいた。しかし不思議にことに網戸に破れがあるわけでもない。網戸の戸枠がほんの数mm開いているだけで、そこから入り込んだとは思えぬ。もう少し開いていてそこから入り込んで出られなくなり、暴れて網戸を逆に閉めてしまったのだろうか。とても小鳥の力では動かせないと思うのだが。網戸を開けてやるとまっしぐらに飛んで行った。

で、思い出した。ワタクシがまだご幼少の頃、オフクロやオバなどと共にオフクロの里帰り先の大阪天王寺動物園に行った折り、猿に異常な親近感を覚えたワタクシは猿の檻の手前にあった鉄柵の間に頭を突っ込んで猿を観察していたのだが、耳が引っ掛かって抜けなくなるという世にも恐ろしい経験をした。猿は面白がりワタクシの眼前に集まって来る、観客も集まって来る、オフクロやオバはオロオロするはの大騒ぎとなった。動物園の職員達に石鹸を塗られても抜けず、消防署まで来た。結局は消防隊の人達が鉄柵をジャッキか何かで広げて救出された。泣きじゃくるワタクシに園長が当時は貴重品だったバナナをくれたのを覚えている。ついでにもう一つ思い出した。ムスコがまだ小さかった頃、オヤジの同僚だったミウラ先生が来宅することとなって小淵沢駅に迎えに行った帰り、山梨県と長野県の県境にある甲六川という小さな川の橋を渡った所でで猿の群れが道路に出て来た。他の猿が道を渡って橋の脇の鉄柵の間をすり抜けて行った後、大きな太ったメタボ・ボス猿が悠々と辺りをヘイゲイしながら鉄柵の間をすり抜けようとしたのだが、お尻が引っ掛かって抜けなくなってしまった。慌ててもがくのだが抜けない。こうなるとボスの威厳もあったものではない。ギャーギャー喚きながら暴れ回り、やっとのことで抜けると大慌てで逃げて行った。その後、群と合流したボス猿、きっと気恥ずかしかったに違いなく、何と言い訳したのやらであった。ミウラ先生、いたく面白かったようで、その後もお会いする度にこの話しとなった。ミウラ先生は高校の数学教師であった。ノッポでボサボサ頭で飄々としていらした。授業は真面目でちっとも面白くないのだが、数学研究室や山小屋での独特のしゃがれ声での冗談や人物評論は誠に面白かった。特に高校生に話すドイツ語混じりのエロ話はなかなか高尚で、さすが旧制松本高校で北杜夫や辻邦生と同級生だったことだけはある。旅行でいらした当時のソ連『赤の広場』で急に大キジをもよおし、植え込みの影で用を足したのを衛兵に見つかり、制止を振り切り、必死でズボンを押さえて逃げ、「銃殺されるかと思った」との話しには飲んでいたビールを吹き出した。ミウラ先生はもういらっしゃらない。

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