スーパー婆ちゃん

一昨日の夕方、いつもの八ヶ岳に向かって真っ直ぐ上る道をウォーキングしていた時、セロリに水を掛けている婆ちゃんから話しかけられた。IMG_4193(変換後)「オメェ様の家はどこだ?」「ムネヒコさんちの下」「そうかい。そりゃまあ遠くからゴクロウサマ」「セロリ持って行くかい。うん?まだ歩くかい。帰りにまた寄りな」と言ってくれる。一番上の横道まで行ってからお墓経由で下りて来たら、丁度水掛けが終わったところで、セロリを採ってくれる。「婆ちゃんは誰んち?」と聞くと「クメイチロウちだけど、クメイチロウはもう死んだ」とのこと。「じゃあ、ひょっとしてクメオさんのオカーサン?」と聞くと「クメオを知ってるだかい?」「よく知ってるよ」「そうかい、そりゃ悪いことできんなぁ」と笑っている。「オメェ様は何の仕事してるだかい?」「ガラス工芸してる」「そうかい、そりゃタイヘンダ」等々しばらく話し込む。帰ってシチューに入れたり、サラダにして食べたが採りたてのセロリは水々しくて美味い。

昨日も夕方歩いていたら今度はクメオさんが畑脇に座り込んでタバコを吸っていた。ムスコが『西郷さん』と呼んでいたが、何となく西郷さんの風貌である。「ヤァ、昨日はお母さんにセロリを貰ったところだ」と言ったら「そうかい、そうかい、オクズミさんに出会ったらセロリをやろうと思っていたところだ」とのこと。ワタクシも座り込んで暫く話し込む。クメオさんと知り合ったのはムスコがまだ小さい頃の小学校の運動会で隣に座っていた時である。元々田舎の運動会というのは村のお祭りみたいなもので、昼食にはご馳走を用意して、勿論ビールや焼酎を飲んでというのが当たり前であった。酔っ払った爺様が徒競走に紛れ込んで孫と走ったり、孫の応援にムシロ旗を持って走り回っていたり・・・ところがこの頃から小学校のお達しで『飲酒禁止!』となったのである。ところが隣に座ったクメオさんは「酒もない運動会なんて冗談じゃない!」とクーラー・ボックスにビールや焼酎を詰め込んできていて、初対面のワタクシに「やぁ、飲むじゃん」とどんどん酒をくれた時に知り合った。
クメオさんは57才。この村の生まれで、東京の大学を出て農協の支所長をやりながら夏はセロリ専門に作ってもいる。聞くと朝は2時に出荷の為に畑に来るという。6時過ぎまで出荷をやり、それから農協に出勤。夜は8時に寝るという生活が10月中旬まで続くという。

今日の散歩でカミサンと歩いていたらまたクメオさんの婆ちゃんと言うかお母上に会う。「セロリ水々しくて美味しかった」と言うと「そうかそうか。セロリの太いところは天ぷらにすると美味いぞ。酢豚に入れても美味いぞ」と教えてくれる。「10月15日が最期の出荷。今年はもうセロリの出荷よりオラの出棺になるかと思ったけれど何とか保った」と言いながらひょいとセロリの収穫用の機械から飛び降りる。「クメオさんは朝2時から来ているんだって?」と言ったら「ワシは1時半には来ている。もっとも夕方6時には寝る」とのこと。背の小さい婆ちゃんで、クメオさんの年から考えればとおに80才は超えているだろうに元気・元気である。「じゃあ、また」と言って軽トラに乗って颯爽と帰って行った。

カミサンは「うちの母もクメオさんのお母さんの爪の垢でも煎じて飲むといいんだけれど・・・」と溜息をついている。
それにしてもスーパー婆ちゃんである。

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